雇用契約が先にある、という設計の意図
最初から「労働者」として扱われることを、パストーレは制度の入口に置いている。雇用契約を結び、最低賃金以上の収入を得ながら訓練を積む就労支援A型という枠組みは、訓練が先で収入が後、という順序を逆にした仕組みだ。雇用保険への加入と、継続勤務による有給休暇の取得も権利として保障されており、知的障害・精神障害・発達障害・双極性障害・引きこもりなど多様な状態の方が同じ枠組みの中で働いている。
「働いている、という実感が先に来た」という利用者の声がある。訓練を積んでからやっと認められるのではなく、初日から労働者として対等な立場で扱われることが、自己肯定感の起点になっているケースは少なくないようだ。
薪の成形から食品販売まで、業務の幅が語る現場の哲学
社会福祉施設の清掃、薪の成形、加工食品の製作・販売、箱詰め、髪飾りの製作——これだけの種類を並べているのは、利用者が「試す」ことを前提にした設計だ。施設内と施設外の両方で作業が行われており、特に外部現場での業務は事業所の中だけでは生まれない経験を積む機会になる。体力の使い方・集中の種類・対人場面の多少が作業ごとに異なるため、実際に手を動かしながら自分に合う業務を絞り込んでいける。
「清掃は苦手だったけど、食品加工に変えてから全然違った」という声が利用者から出ている。作業の変更が後退ではなく前進として受け止められる雰囲気が、この事業所にはある。
岡谷と茅野、2市をつなぐ拠点の配置
茅野市塚原(JR茅野駅から車約4分)とパストーレ岡谷・岡谷市本町(JR岡谷駅から徒歩約9分)。どちらの事業所も自家用車と公共交通機関の両方でアクセスできる立地にあり、長野県内の2エリアをカバーしている。体調に波がある中で継続して通うには、事業所との物理的な距離が現実的な条件として影響する。代表は昼神 浩氏、電話番号は0266-78-3420、定休日は日曜・祝日。
2拠点という配置は、「どちらかが遠くても」という保険としても機能している。転居や生活の変化があっても、もう一方の事業所に切り替えられる可能性があることは、長期的な利用継続の観点から小さくない安心感につながっている。
見学を「来院」ではなく「偵察」として受け入れる
特別な持ち物なし、事前連絡だけで見学できる。家族同伴も可能で、複数回の体験にも対応している。スタッフが作業場所を案内しながら疑問に答える形式で、来所した日に結論を出す必要はない。うつ病・統合失調症・パニック障害・身体障害・引きこもりなど、不安を抱えた状態で訪れる方が多く、そのことはスタッフ側もよく分かっている。
「二回目に来たとき、初回とは違う質問ができた」という利用者の言葉が印象的だった。一度見た後に自分の中で整理されて出てきた疑問を、また現場で確認できる。その往復が、利用開始後のミスマッチを減らしているのだと思う。


